2024年度オープンセミナー 「心の専門家とは何か—公認心理師と臨床心理士の思想的対立を超えて」

研修内容詳細

主催
「ありふれた臨床」研究会
開催日
2025年2月23日(祝) 12:30-18:00
場所
TKPガーデンシティPREMIUM品川HEART ホール8A
当日オンライン同時配信
内容
 本研究会では、通年の研究会に加え、年に一度、研究会外の専門家にもご参加いただける、オープンセミナーを企画しています。今年度は、「心の専門家とは何か」と題し、公認心理師・臨床心理士の信田さよ子氏をお呼びします。

 臨床心理士と公認心理師。心理臨床の世界はここ20年、この二つの資格、いや、そこにある二つの思想の元で揺れてきました。いがみ合い、割れてきたと言ってもいい。しかし、公認心理師制度の開始からすでに5年が経ち、二つの思想の葛藤は消化され、昇華されるべきときが来ていると思います。
 ですから私たちはここで今一度、真剣に公認心理師について考えてみたいと思います。そこにはこれまでの臨床心理学で光が当たりにくかった専門性が掲げられているからです。たとえば、組織のための臨床、組織を動かす臨床、臨床の場そのものを作り出す臨床などなど、心のために社会を動かす仕事です。それは果たして「心」についての専門性なのか。ここが議論のしどころです。
 もちろん、ここにはいわゆる「Gルート」問題も絡んできます。心理の専門性を身に着けるために必要な現場経験とは何か、研修とは何か、何を学べば「心の専門家」と言えるのか。いや、そもそも私たちは「つながりの専門家」なのではないか。問いは尽きません。
 本セミナーでは、これらのことを臨床経験から考えてみようと思います。理論や理念ではなく、実践と現場から考える。これが臨床家のやり方であり、「ありふれた臨床」研究会のやり方です。私たちは実際のところ、何をしているのか。
 今回は臨床心理士を持たずに現場で臨床経験を積んできた公認心理師のA氏のありふれた臨床と、病院組織の中で臨床心理士・公認心理師として仕事を作り、拡大させてきた梨谷さんにお話を頂き、信田さよ子さんと東畑、さらには司会の沢宮容子さんと山崎も交えて、ディスカッションをしてみようと思います。

 今だからこそ、問い直しましょう。心の専門家とは何か? それは、これから心の仕事をするすべての人のための臨床的で、そして思想的な問いであるはずです。そこにはきっと臨床心理士という資格の光と影が浮かび上がり、公認心理師という資格の光と影も見えてくるでしょう。そのようにして、その先にある心の専門家の姿を想像してみようと思うのです。
プログラム
12:30-13:00 東畑氏による講義「心の専門家の二つの思想—公認心理師と臨床心理士とは何だったのか」
13:00-14:00 信田氏による講義「臨床心理士と公認心理師の光と影」
 休憩
14:15-15:30 A氏による実践報告「Gルート公認心理師によるGルート論」+信田氏コメント
15:30-16:45 梨谷氏による実践報告「心の仕事を作る仕事」+信田氏コメント
 休憩
17:00-18:00 フリーディスカッション
講師
信田さよ子(原宿カウンセリングセンター) 
1969年お茶の水女子大卒、73年同大大学院修士課程修了(児童学専攻)。駒木野病院勤務、95年に原宿カウンセリングセンターを設立。アルコール依存症、摂食障害、ドメスティック・バイオレンス、子どもの虐待などの問題に取り組む。2021年より顧問を務める。日本臨床心理士会理事、日本外来精神医療学会常任理事ほか。現日本公認心理師協会会長。『アディクションアプローチ』『DVと虐待』『カウンセラーは何を見ているか』(いずれも医学書院)ほか、著書多数。

沢宮容子(東京成徳大学)
筑波大学大学院教育研究科修了。博士(心理学)。専門は、臨床心理学・カウンセリング心理学・心理療法統合。現日本カウンセリング学会理事長。著書に『新版カウンセリング心理学ハンドブック』(共著 金子書房 2024)、『臨床心理学と心の健康』(編著 東京大学出版会 2023)など。

A氏(公務員)
大学時代より一時保護所に非常勤で従事。卒後、同所や発達支援に従事した後、地方自治体に入庁。児童相談所、精神科デイケア、ひきこもり相談、思春期精神保健相談等を経て、現在は警察官通報(精神保健福祉法23条)など行政ならではの対応を含んだ精神保健業務に従事。

梨谷竜也(馬場記念病院)
大阪府出身。関西大学大学院社会学研究科修士課程修了。療育、発達相談、教育相談などを経て、2002年より現職。身体科領域の入院・外来の心理査定および支援、自費の外来心理支援、職員相談、保育所等訪問支援など幅広い心理臨床実践を行っている。

東畑開人(白金高輪カウンセリングルーム)
京都大学教育学部卒、京都大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。精神科クリニックでの勤務と、十文字学園女子大学准教授を経て「白金高輪カウンセリングルーム」主宰。博士(教育学)。専門は、臨床心理学・精神分析・医療人類学。著書に『野の医者は笑う—心の治療とは何か』(誠信書房2015)『日本のありふれた心理療法—ローカルな日常臨床のための心理学と医療人類学』(誠信書房2017)『居るのはつらいよ—ケアとセラピーについての覚書』(医学書院 2019)、『心はどこへ消えた?』(文藝春秋 2021)、『なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない』(新潮社 2022)、『聞く技術 聞いてもらう技術』(筑摩書房 2022)、『ふつうの相談』(金剛出版 2023)、『雨の日の心理学』(KADOKAWA 2024)など。

山崎孝明(こども・思春期メンタルクリニック)
上智大学大学院博士後期課程修了。博士(心理学)。専門は、精神分析・臨床心理学。著書に『精神分析の歩き方』(金剛出版 2021)、『精神分析的サポーティブセラピー(POST)入門』(共著 金剛出版 2023)、『当事者と専門家——心理臨床学を更新する』(金剛出版 2024)など。
参加対象者
・臨床心理士、公認心理師のいずれか、または両方をお持ちの方
・臨床心理学系の大学院生
・上記以外の方は、個別にご相談ください:arifuretarinsyou@gmail.com
*守秘義務を遵守するため、資格証明書・学生証のデータを提出していただきます
定員
現地200名程度
参加費
現地参加:6,000円 オンライン参加:4,000円
(大学院生は現地4,000円、オンライン2,000円)
*申し込み完了後に、振込口座をご連絡いたします
申し込み方法
以下のGoogleフォームよりお申し込みください
https://forms.gle/e1svjN8rGAHup9Ym6
申込期限
現地参加   :2025年1月31日 *会場参加には限りがありますので、定員に達し次第締め切ります オンライン参加:2025年2月19日
問い合わせ先
arifuretarinsyou@gmail.com
〒732-0052
広島市東区光町1丁目11-5  チサンマンション広島1111号
© 2025 広島県臨床心理士会. All rights reserved.