「ありふれた臨床」研究会 2025年度 「臨床力」再考

研修内容詳細

主催
「ありふれた臨床」研究会
開催日
1回目(04/25)、2回目(05/23)、 3回目(06/27) 、4回目(07/25)、5回目(09/26) 臨床研究 6回目(10/24) 7回目(11/28) 8回目(01/23),9回目(02/22) ,10回目(03/27)
場所
・zoomを使ったオンライン形式
内容
2025年度で「ありふれた臨床」研究会は4年目で、そしておそらく最終年度です。少なくとも、現在の月1回というインテンシブな形での開催は最後になります。というのも、本研究会で取り組んでいた課題について、一定の達成があったと考えているからです。
心の臨床を心理学的に考えるだけではなく、社会的にも考える。学派の視点だけではなく、現場の体験から考える。そのための理論的枠組みを作ること、そして一つのケースを深掘りする事例研究ではなく、臨床現場全体を描く臨床エスノグラフィーという研究法を確立すること。これが本研究会の大きな目的でした。
これらは今では少しずつ広まっていて、本研究会以外でも臨床を政治的・経済的に考えるさまざまな社会的な取り組みや議論がなされているように思います。それらは、東畑の『ふつうの相談』や山崎の『当事者と専門家』といった書籍にまとめられ、金剛出版の雑誌『臨床心理学』でも特集が組まれました。研究会メンバーたちも論文を書いたり、本の分担執筆をしたりしていて、学会でシンポに登壇したり、賞をもらった人もいます。
ですから、一度ここで閉じようと考えました。研究会とは、惰性で続けるのではなく、謎を追いかける時間であるべきだと思うからです。そういうときに、研究会なるものは生き生きとしています。
ただし、まだ一つ謎が残っています。それはこの研究会の発足当時からあった批判に由来します。つまり、「ありふれた臨床」といって肯定的に語ると「なんでもあり」になってしまうのではないか。よい臨床と悪い臨床の区別はあるのではないか。この研究会はあまりにアナーキーなのではないか——。
そう、問われているのは、臨床の価値の問題、いわゆる臨床力と言われてきたものの問題です。僕らの学問において、数多くの血を流し続けてきた大問題です。
クリティカルな批判です。真実が含まれています。この研究会で考えていることの弱点を突いている。だけど、この3年間、理論的探究と臨床研究を積み重ねてきた今ならば、私たちはこの謎に取り組むことができるはずです。
臨床のよし悪しを前世代的な学派の独断ではなく、現場の複雑な事情の中で考えること。心理学的な価値だけではなく、社会的な価値「も」含めて考えること。善き臨床とは何か、どうすれば善き臨床が可能になるのか。そのために、そもそも「臨床にとって善いとは何か」という根源的な謎に取り組まねばなりません。
臨床力を再考する。これが「ありふれた臨床」研究会の最終課題となります。もちろん、今期からの参加も、かつて参加したことのある方も大歓迎です。最初の三回のレクチャーで研究会の現在地までご案内する予定ですし、昨年度、一昨年度の講義もアーカイブ開放いたします。
ぜひご参加をお待ちしています。

 今年度も、グループLINEを作成する予定です。ここから多くのつながりが生まれ、シンポジウムや勉強会、読書会などに結実しています。主催である東畑・山崎とは関わりがないつながりがうまれることは、私たちにとって望外の喜びです。それにより、心理臨床学という学問が鍛えられるはずだからです。
本研究会は今年度で一区切りを迎えます。全国の心理職のつながりを提供するプラットフォームとしての機能も、終わりを迎えることになります。ぜひともこの機会に、志を同じくする仲間とつながっていただければと思っています。
○研究会の開催形式
・zoomを使ったオンライン形式(8月と12月はお休み)
・毎月第4金曜日20時〜22時開催
・年間計10回開催(講義3回+臨床研究5回+オープンセミナー1回+ふりかえり1回)
 *全回見逃し配信あり
*2023, 2024年度の講義計6回分は、研究会期間中、アーカイブ解放いたします。
講師
・東畑開人
京都大学教育学部卒業、京都大学大学院教育学研究科博士後期課程修了
博士(教育学) 、臨床心理士、公認心理師
白金高輪カウンセリングルーム主宰
主な著書訳に『野の医者は笑う—心の治療とは何か』(誠信書房)、『日本のありふれた心理療法—ローカルな日常臨床のための心理学と医療人類学』(誠信書房)、『居るのはつらいよ—ケアとセラピーについての覚書』(医学書院、大佛次郎論壇賞受賞、紀伊国屋じんぶん大賞受賞)、『心はどこへ消えた?』(文藝春秋)、『なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない』(新潮社)、『聞く技術 聞いてもらう技術』(ちくま新書)、『ふつうの相談』(金剛出版)、『雨の日の心理学』(KADOKAWA)、デイビス『心理療法家の人類学—心の専門家はいかにして作られるのか』(誠信書房、監訳)、ロバートソン『認知行動療法の哲学』(金剛出版、監訳)など

・山崎孝明
上智大学文学部卒業、上智大学博士後期課程総合人間科学研究科心理学専攻修了
博士(心理学)、臨床心理士、公認心理師
現在、こども・思春期メンタルクリニックや都内私立中高一貫校のスクールカウンセラーとして勤務。
主な著訳書に、『精神分析の歩き方』(金剛出版)、『当事者と専門家—心理臨床学を更新する』(金剛出版、分担執筆)、『精神分析的サポーティブセラピーPOST入門』(金剛出版、共著)、『フロイト技法論集』、『フロイト症例論集2—ラットマンとウルフマン』(共に岩崎学術出版社、共訳)など
参加対象者
「臨床心理士」もしくは「公認心理師」の資格保有者、あるいは臨床心理学系大学院に在学中か卒業後すぐの人で守秘義務を守れる方
*臨床現場や実践内容は問いません。様々な現場で活動されている方、様々な実践を行っている心理士を歓迎します
*臨床心理士指定大学院で習得する知識を前提とした研究会となりますので、ご承知おきください
*臨床研究の発表者を募集します(薄謝ですが、謝金をお支払い致します)
参加費
25,000円(全10回分、一括払いのみ) *2022〜2024年度に研究会に参加されていた方は20,000円
振り込み方法につきましては、参加資格を確認後のご案内となります。
*一度納入された参加費は原則お返しできません
申し込み方法
フォームよりお申し込みください。
https://forms.gle/DNprKg3quQWfCJYs5
申込期限
2025年3月31日
問い合わせ先
arifuretarinsyou@gmail.com
URL
https://arifuretarinsyou.wixsite.com/my-site
〒732-0052
広島市東区光町1丁目11-5  チサンマンション広島1111号
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